新聞販売店の収益の仕組み 意外とボロ儲け

日本には全国紙と呼ばれている新聞があります。読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・産経新聞・日本経済新聞です。これらの新聞社は日本全国津々浦々まで戸別配達してくれます。また、コンビニや駅の売店でも入手が可能です。

駅やコンビニでは新聞単体の販売ですが、地域の新聞販売店から月極購読をすると、朝刊の中に折り込み広告が入ってきます。みなさんは、あの新聞折り込み広告の手数料収入が新聞販売店の戸別配達制度を維持していく上で必要不可欠ということをご存知でしょうか?

駅やコンビニではお客さんが自分から出向いて新聞を購入しますが、一部当たり約130円~160円位だと思います。そして月極(つきぎめ)で購読をしても一日当たりの値段は殆ど同じです。わざわざ自宅のポストまで配達をしてもらっても、駅で購入するのと同じような値段になることに疑問をお持ちになられたことはないでしょうか? 今回はそのカラクリについてご説明したいと思います。

駅売りの新聞 即売スタンド

新聞販売店が新聞社から仕入れる新聞の原価

新聞販売店が発行本社から仕入れる新聞の原価は概ね月極購読料の50%です。つまり新聞販売店へ集金時に支払っている月極購読料の半分は販売店の利益となっているのですが、月極購読料を4000円としても、それだと販売店の利益はたったの2000円位ということになります。

いくら新聞配達員が効率良く配達していると言っても、一人の新聞配達員が配達できる件数には限りがあり、都市部で230部前後で郊外などでは180部程度となっているようです。そうしますと新聞配達員一人当たりの収益は40万円前後となりますが、新聞販売店には配達員以外にも事務員や経営者など配達に携わっていない社員さんもいますので、月極購読料の50%で新聞販売店を維持していくことはできません。新聞販売店で使用している車やバイクの車両管理費やガソリン代、保険などを考えると赤字になってしまいます。

新聞販売店の収入の柱、折込広告手数料

朝刊に折り込まれているチラシ(新聞折込広告)の手数料こそが、新聞販売店が戸別配達網を維持していく上で重要な収入源となっているのです。チラシのサイズによって手数料は若干変わってきます。B5サイズで一枚当たり2.7円前後、B4サイズで3.4円前後が一般的です。家電量販店などの大型サイズのチラシの場合だと5円~10円を超えていますが、平均すると折り込みチラシ一枚当たりの収益は約3円と考えて間違いはありません。

ひとつの新聞販売店が顧客を約2000軒前後持っています。地域によって差はありますが朝刊に折り込まれる折込広告が一日平均30枚と仮定すると、新聞販売店の一カ月の折り込み広告手数料収入は2000軒x30枚x30日x3円=540万円となります。年間で約6400万円の新聞折込広告手数料収入です。

手数料収入だけで年間6000万円を超えるビジネスはそうあるものではありません。新聞販売店の立地が大都市近郊で、新聞販売店の配達エリア近隣に家電量販店やスーパー、パチンコ屋など定期的に新聞折込広告を利用している商業施設や商店が多いと、その地域の膨大な宣伝広告費を一手に享受できるのが新聞販売店ビジネスの魅力です。

一日当たりの新聞折込広告が平均で30枚を超える新聞販売店も普通にあり、そのような新聞販売店は立派な自社ビルで新聞配達を行っていますので、すぐに分かります(笑)

新聞折込広告の流れ

意外とボロ儲けの新聞販売店経営

新聞販売店の経営者は概ね年収1000万~3000万円と言われています。販売店の立地によって収益は大きく差があるのですが、他の自営業者と比べるとかなりの高収入となります。

しかし、慢性的な配達員不足に喘いでいる業界なので、スタッフ確保の為の求人コストなどが意外と新聞販売店経営を圧迫するのです。さらに、事実上年中無休で販売店を運営する為に、新聞販売店経営者も年中無休で仕事をする対価として高収入な訳で、はたしてそれがホントの高収入と呼べるかどうかは疑問でもあります。

近年では、インターネットやスマートホンの普及で新聞を購読していない家庭も増加傾向にあり、明らかに斜陽産業です。購読者数が毎年1%~3%減り続けているのが新聞業界の現状なので、今から新規で新聞販売店を始めるのは時すでに遅しかと思われます。

新聞の購読料を集金に来られる販売店のスタッフの方に声を掛けてみると、口々に「非常に厳しいです。読者層の高齢化が進んでおり、細かな字が読みにくいという理由で購読を中止されることも多く、若者は全く新聞を読まないのでじり貧です」との返答をされたことがありました。

新聞ビジネスの収益構造

日本の治安維持に必要不可欠な深夜・早朝の新聞配達

日本の新聞戸別配達制度は世界で類を見ないすばらしいシステムです。ぜひこの制度は維持してほしいと思います。別件になりますが、新聞配達制度は治安維持の観点からも優れていることをご存知でしょうか?

地域によっては深夜25時頃から新聞配達は始まります。大都市の中心部でも3時頃から新聞配達員がありとあらゆる路地を隈なく自転車やバイクで走り回っています。

つまり、皆さんが寝静まった暗闇の街を、新聞配達員が隅々までウロウロと配達していることは、防犯上非常に有益なのです。実際に早朝深夜の事件や事故では、警察が真っ先に聞き込みに向かうのは新聞販売店だといいます。

あと、老人の一人暮らしをされている家庭の異変を真っ先に察知するのはやはり新聞配達員さんです。家を留守にする場合は、新聞販売店に留守中のお休みを連絡します。そして、連絡なしに前日の朝刊が抜けていないと、新聞配達員の方は様子がおかしいとすぐに分かるそうです。

なぜなら新聞屋さんは、毎月集金に伺っているので世帯構成を把握しており、高齢者の独り暮らし家庭なども完全に把握しているからです。そういった意味でも新聞の購読は続けたいですね。

新聞配達の頼りになる相棒 ホンダプレスカブ

新聞販売店経営者の年収

20年ほど前まで(インターネットや携帯電話が普及する前)は、新聞販売店を経営すると「3年で家が建つ、5年でビルが建つ」と言われていたのです。一店舗だけの経営ではビルは無理かと思われるかもしれませんが、10年あれば確実に自社ビルを建てることが出来たほど高収入の職種だったのです。

一店舗だけの経営でも新聞販売店の経営者の年収は1000万円~3000万円です。複数店舗の経営をされていると、2000万円~5000万円の年収があると思って良いかと思います。しかし、これだけの年収を大半の新聞販売店経営者が得ていたのは2003年頃までのお話です。現在では超高収益の新聞販売店は減っていますが、それでもサラリーマンより高収入を得ている新聞販売店の経営者は普通に存在します。

これらの高収入を得ている新聞販売店の経営者は、大都市かその近郊住宅地を販売拠点としている大手新聞販売店に多い傾向です。新聞販売店は立地によって収益に大きな差が生じる業種なのです。

父親が新聞販売店経営を始めて、その娘さんや息子さんが後を継いでいるような新聞販売店は高収益の販売店の可能性が濃厚となります。どのビジネスでもそうですが、一般的なサラリーマンよりも収入がよければ家族に継がせたいと考えるのが普通です。逆に、現在の経営環境が厳しいようだと自分の世代で廃業を検討するものです。

真夜中の新聞配達

新聞販売店従業員の年収

これは地域によって違いがありますが、大都市圏の販売店で正社員として新聞販売店に勤めている場合は、年収は300万円~400万円が相場になります。店長クラスでも年収は450万円前後です。新聞販売業界は新聞販売店で定年まで働くというよりは、自分で独立して自分の新聞販売店を持つことがゴールとなっている業界なのです。

新聞販売店で下積み時代を過ごして、仕事ぶりを認めてもらえれば、一国一城の主として独立させてもらえます。しかし、近年の新聞販売は斜陽産業なので、新聞販売店の経営者になるのはちょっと勇気が必要かもしれません。

給与明細

新聞販売店従業員の退職金

新聞販売店の従業員は、新聞発行本社が管理する退職金制度に加入します。新聞販売店に勤める従業員の雇用主は各販売店の社長さんになるのですが、福利厚生制度については新聞の発行本社が一元化して管理しています。

最低ランク社員として評価されていても、退職金は在籍年数x10万円は積み立てられています。例えば、新聞販売店で従業員として5年間ほど働いた場合は、約50万円程度の退職金が支給されるということです。決して高い金額ではありませんが、退職金制度がない会社よりはましだと思います。

退職届

商売としての新聞販売業

基本的に新聞販売店が経営難に陥って、急に倒産することはありません。なぜならば、仕入れた商品(新聞)は販売店に到着後、数時間以内に完売するのが前提の商売だからです。

月極購読で当月の売り上げも翌月の売り上げも確定している状況で商売をしていますから、売り上げと収益は簡単に計算が立つのです。その前提で従業員を雇用して商売をしていますから、普通に働いていれば倒産する可能性は少ないのです。

商売をするにあたって一番の悩み事は商品の仕入れです。市場競争力のある商品の仕入れこそが最も重要な課題ですが、新聞販売店は発行本社から商品を電話一本で仕入れることが出来るので、その点に関して問題はありません。

あと、新聞販売業は地域ごとにテリトリーがありますから、同じ商品の販売で価格競争は起こらないのです。更に「再販制度」と「新聞特殊指定」によって新聞の販売価格は全国一律となっていますから、価格競争がないことも新聞販売店の経営にとってはプラス要因です。

日本経済新聞社

新聞販売店の廃業 近隣店舗と生き残りを賭けた我慢比べ

上記で新聞販売店にはテリトリーがあると書きましたが、今まではこのテリトリー内で自分の販売店の顧客を増やすことに注力していました。しかし、最近の新聞販売店は「残存者利益」を求めて近隣の同系列新聞販売店と我慢比べをしているのが現状です。

近隣に同系列の新聞販売店が4店舗あるとします。読者が減少して経営が立ち行かなくなれば廃業を申し出る店主もいますので、その場合は廃業店の営業エリアに隣接する近隣の3店舗が少しずつ配達エリアを拡大して廃業したエリアの顧客を引き継ぎます。これが非常に旨味のあるイベントなのです。

ライバル紙と営業合戦を繰り広げても顧客は簡単に増えませんが、近隣店舗がギブアップ(廃業)してくれると一気に自店舗の顧客が数百軒も増えるのです。現在はどの新聞販売店店主も、隣接する同系列の新聞販売店が経営環境悪化に耐え切れなくて廃業するのを待っているのが現状なのです。

ライバル紙との戦いの時代は終焉を迎えつつあり、同系統の新聞販売店と「残存者利益」の取り合いになっているのが実情です。本来はライバル紙と競うはずの新聞専売店ですが、現状はそれどころではなくなっており、それを危惧した新聞発行本社は「地域販売会社」方式の専売店を導入するなど、次世代の新聞販売網構築を模索しています。

近隣の新聞販売店が廃業すると?

まとめ

アメリカなど海外にも新聞の戸別配達を行っている地域はあります。また、ニューヨークタイムズなど社会的地位の高い人たちが好んで読む新聞もあり、現代においても新聞記事は社会的に信頼されています。

これからも新聞は世間から公正な情報を提供する媒体として支持され続けると思います。ただ、インターネットやスマートフォンが急速に普及していますので、紙媒体としてだけでは厳しくなってきています。

関連記事:セット版と統合版 夕刊と再販制度の関係から見る新聞販売
関連記事:新聞の発行部数 新聞販売店の現状とその歴史

スポンサーリンク