1995年にwindows95が発売されてから、パソコンは生活必需品になりました。年を追うごとに発売される新型CPUの性能は驚異的な変貌を遂げ、今では数万円のデスクトップ型パソコン1台で、一昔前では想像も出来なかったHD画質の動画編集などを個人でも簡単に出来る時代になりました。パソコンは今では仕事や生活に必要不可欠なツールとなっています。
昔から基本的に変化のないパソコン内部の部品構成
しかしながら、パソコンの基本的な部品構成は昔から殆ど変化していません。パソコンケース、電源装置、ハードディスク、マザーボードとマザーボードに搭載されているCPUやグラフィックボードなど20年前と現在を比較しても、形状や大きさは以前よりちょっとコンパクトになった程度です。CPUの冷却ファンなどは全く変化していないと言っても過言ではありません。
そして、パソコンの基本構造が今も昔も同じということは、故障の原因もwindows95が世に出た頃と現在でも全く同じなのです。この記事では突然のパソコン(PC)の故障を未然に防ぐために役立つ、意外と知られていない故障原因について書きたいと思います。
パソコンの買い替え理由は、二通りしかありません
人によってはパソコンを使い始めてから、パソコンを数台は買い換えていると思います。買い替えの理由は大きく分けて以下の2点しかありません。
①スペック不足を感じて、高性能の新型PCへ買い替え
②パソコンが故障したので、渋々と新品に買い替え
一昔前まではパソコンが数年で故障しても、買い替えをすることに嫌悪感をあまり抱きませんでした。数年おきに新型高性能パソコンへ買い替えた方が、パソコンを使用した仕事の作業効率が格段に高まったからです。そのため、パソコンがなんらかの原因で故障しても、「より高性能の新型PCへ買い替えを検討していたので、これを機に新品に買い替えよう」と、故障原因について悩むよりも買い替えを選択するのが普通だったのです。
そういえば、PCの故障原因って何だろう?
1995年から2006年頃までは、CPU(中央演算処理装置)プロセッサーの性能が18~24ヶ月で倍になるという「ムーアの法則」によって、シングルコアCPUの動作クロックは倍々ゲームで進化を遂げてきました。これは半導体の集積密度が約1年半で2倍になるペースでCPUの技術革新が進んでいたということです。しかし、半導体の集積密度が高くなるにつれて、発熱の問題が表面化したのでシングルコアCPUの動作クロックを引き上げるだけの時代は2006年頃に終焉を迎えます。
その後はintelやAMDがCorei7やPhenomといったデュアルやクアッドCPUを開発して、現在では複数のコアを搭載したCPUが一般的になっています。ただ、CPUとマザーボードに搭載されている各種コンデンサーや半導体基板が発熱に弱いという点は今も昔も変わりなく、「熱対策」がパソコンを長く使うために必要不可欠な要素なのです。この「熱対策」はとても重要なキーワードなので、この言葉を意識してこの記事を読み進めて下さい。
パソコンの故障とは、物理的な部品の故障とプログラムなどのシステムの不具合のどちらかです
システムの不具合
マザーボードのBIOS(バイオス)の不具合など、システムやプログラム的な故障は素人には避けようがない問題です。ちなみにBIOSとは、パソコンに接続された周辺機器などを制御するためのソフトウェアのことで、キーボードやマウスなどをパソコンに接続するだけで簡単に使えるのは、マザーボードに内蔵されているROMに書き込まれているバイオスがそれらの機器のデバイスドライバーを制御しているからです。
近年では、インターネット経由で周辺接続機器のドライバーを自動でアップデートしたりインストールするようになっていますので、以前に比べてBIOSの不具合などに起因するパソコンの故障は殆どなくなりました。
物理的な不具合
他方、パソコンの物理的な故障の原因は「熱による部品の劣化」や「熱による部品の損傷」なのですが、パソコン利用者の中にはそのことに関して無頓着な方が意外と多いのです。パソコンは熱に弱いということはご存知でも、どの程度の熱で不具合を生じるか知らない方が大半だと思います。
この記事では、パソコン本体内部の熱がパソコンに与える悪影響について少し専門的な説明をしますが、そのことを理解すれば、この記事を読み終えた方はすぐにパソコン本体のカバーを開けて内部の掃除を始めたい衝動に駆られると思います(・∀・)
アルミ電解コンデンサの寿命について
「熱でパソコンが故障する」と説明しましたが、故障までの過程を理論的に説明したいと思います。
パソコンの故障はある日突然に起こりますが、それは偶発的に故障したのではなく、故障するべくして故障したのです。下の画像はパソコン内部のマザーボードの写真ですが、赤丸で囲った部分がアルミ電解コンデンサという部品です。
あまり知られていませんが、PCの部品として使用されているアルミ電解コンデンサには寿命があります。定格温度35℃での利用だと、理論的には24時間連続使用でも15年程度の設計寿命があります。しかし、実際のパソコン使用時にはCPUの温度が65℃~105℃程度になるので、コンデンサの寿命はそこまで長くありません。
電解コンデンサは、温度が10℃上がると寿命が半分になる
電解コンデンサは、温度が10℃上がると寿命が半分になります。コンデンサ内部の電解液が封口ゴムに拡散していくスピードが10℃上昇で約2倍になることが、コンデンサの寿命を決定する要因です。
これがパソコンの物理的な故障の主な原因です。基本的にコンデンサは85℃~105℃の環境下で利用することを想定して設計されていますので、普通にパソコンを利用するだけでは簡単に壊れたりしません。問題はこの「普通にパソコンを利用する」という点で、「普通」を理解していない人が多いのです。
パソコンは定期的に内部の掃除が必要
パソコンを利用している室内の環境にも依りますが、喫煙する部屋でパソコンを利用する場合は最低でも二ヶ月に一回はパソコン内部の冷却ファン周辺の掃除が必須となります。非喫煙の環境下でも年に数回はパソコンケースを開けて、内部の掃除をすることが「普通のパソコンの利用方法」なのです。
パソコンを購入してから数か月ほど利用していると、ある日を境にパソコンから聞こえてくる音が「大きくなったな」と感じるときがあると思います。これはパソコン内部の冷却ファン周辺にホコリが溜まって大きな綿ホコリの塊となり、CPUの周辺温度が上昇している証拠なのです。
パソコンがCPU周辺の高温を検知して、冷却ファンの回転数を引き上げて換気風量の増加を試みている事が、「パソコンから聞こえてくる騒音が大きくなった」原因です。つまり、パソコン内部のコンデンサ周辺の温度が高くなっている表れです。この状態を長く放置していると、コンデンサの寿命を縮めることになりますので注意が必要です。
「熱暴走」という言葉をご存知でしょうか?
半導体は温度が高くなると抵抗が減少し、発熱量が増えます。そして高温になると「発熱量増加」⇒「温度上昇」⇒「さらなる発熱量増加」という状態に突入しますが、これを「熱暴走」と呼びます。パソコンが故障する物理的な要因は、この熱暴走によるコンデンサの低寿命化によりコンデンサの寿命が尽きてしまう事なのですが、これが意外と知られていないのです。
コンデンサは電気を蓄えたり放出したりする電子部品ですが、「電圧を安定させる」「ノイズを取り除く」「信号を取り出す」といった機能があります。コンデンサの「電圧を安定させる」機能が不調になると、基盤上のチップの故障の原因となります。
具体的なパソコンの熱対策
基本的に、購入した状態のままPCを利用していれば問題はありません。定期的にPC側面のカバーを開けて、内部のホコリを取り除くことがパソコンの熱対策として最も重要です。私の場合は、カメラレンズ掃除用のブロワーと綿棒でパソコン内部を掃除しています。
この際に、マザーボードから冷却ファンを取り外して掃除すると、完全に綿埃を取り除けますが注意が必要です。機種によっては、冷却ファンがCPUの裏面と接するようになっていますが、熱伝導性を高めるために冷却ファンとCPUの裏面の間に密着性を持たせるためのクリーム(熱伝導グリス)が塗られています。ネジを外して冷却ファンを外した後は、ぜひとも新品のクリームを少し塗ることを忘れないようにしたいところです。
パソコンの前面に網戸の網などを張り付けると効果的
ガーゼなど厚手の網だと流入風量の妨げとなるので、私の場合はホームセンターで売っている網戸用の交換用網を二重に折って使っています。パソコンは基本的に本体前面から外気をパソコン内部に取り込んで、背面のファンが内部の熱を外部へ逃がす構造になっています。
しかし、パソコンの前面の格子状の隙間は大きすぎて、ホコリが大量にPC内部に入るので、私はフィルターを増強する目的で網戸用の網を利用しています。当然ですが、この網戸用の網も定期的に洗って掃除をしています。約二週間でかなりの綿ボコリが付着しますので、定期的な清掃が不可欠です。
パソコンには空冷式と水冷式が存在しますが、空冷式が一般的です
冷却ファンや排熱ファンを搭載した一般的なパソコンを「空冷式パソコン」と呼びます。つまり「空気の流れ」を利用してCPUやコンデンサなどを冷却するシステムを搭載したパソコンということです。冷却方式を表記している理由は「冷却」がとても重要だからなのです。
これは自動車で例えると、「エンジンオイルの交換」に匹敵するくらい重要事項なのですが、メーカーはパソコンユーザーに徹底した「パソコンの熱問題」を注意喚起していません。パソコンユーザーのメンテナンス不足が原因で適度にパソコンが故障したり壊れた方が、メーカー的には儲かるからです(・∀・)
この記事に書いているような「熱暴走の原理」や「電解コンデンサーの寿命は、使用想定環境の部品温度が10℃上昇しただけで、寿命が半減してしまうこと」などは、決して表記していません。「定期的な掃除を怠ると故障の原因となります。」と、一言で最も重要な説明がされているのです。
まとめ
近年発売されたパソコンは、かなり高性能です。インテルのCPUなら10年前に発売された第2世代のクアッドコアQ9550でも現役で十分に使える性能です。core i シリーズ搭載のPCなら、今後10年間は現役で稼働できる性能を持ち合わせています。
最近ではスマートフォンでも、新機種をすぐに購入する人が減っていると言われています。数年前に発売された機種と現在発売されている最新機種との性能差が殆ど無いからです。パソコンに関しても同様で、最新のオンラインゲームを4K画質で楽しみたいといったハイエンドユーザー以外は、頻繁に最新機種に買い替える必要性は薄れています。
そう考えて、今お使いのPCを長期間使おうと考えるのなら、PCの寿命を延ばすためにも定期的なPC内部の清掃は必須となります。もし、購入時から一度も内部の清掃をされていない場合は、早いと約2年でPCが故障することもありますが、その殆どの原因はPC内部のホコリによるコンデンサの故障ということはあまり知られていません。
「購入時よりもパソコン内部の冷却ファンから聞こえてくる音が大きくなった」と感じている人は、それは気のせいではありません。ファンの回転数が高くなったために騒音が大きくなっているのは、「近いうちにパソコンが故障します」という警告の表れなのです。
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